重婚罪について、刑法に次のように規定されています。

(重婚)

第百八十四条 配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。

 

まず、対象となるのは、① 配偶者のある者です。

法律上の婚姻関係にあることが必要です。

法律上の婚姻関係は、結婚する意思がある2人が、市区町村役場に婚姻届を出して結婚している人が重婚罪の主体となります。

 

そして、② 重ねて婚姻をしたことが必要です。

こちらも法律上の婚姻を意味します。

つまり市区町村役場に婚姻届を出して受理されることで、重婚罪が成立することになります。

重婚罪の未遂を処罰する規定はないため、単に結婚の約束をしたとか、役場に婚姻届を出したけれども受理されなかった場合は罪にはなりません。

 

最後に、③ 相手方となって婚姻をした者、つまり、既婚者と婚姻した人も重婚罪のもう一方の主体となります。

ただし、相手に配偶者がいることを知らなかった場合は、故意がないため処罰されません。

 

ところで、前婚と後婚が同時に戸籍に記載されることは実務上ほとんど起き得ないことであり、重婚(既遂)罪が成立する余地がほとんどないと考えられますが、どういった場合に成立するのでしょう。

 

過去の判例をみますと、

妻に無断で協議離婚届を偽造し戸籍上婚姻関係を解消し、別の女性と婚姻したという事例で重婚罪の成立が認められたものがあります。

 

前婚の婚姻関係が適法に解消されないうちに他の婚姻関係を成立させた場合は、重婚罪が成立するということです。

つまり、前婚の離婚が無効となって、再婚が重婚になるということです。

  

また、外国方式での婚姻により戸籍に記載されないまま別の婚姻届が受理される、重婚罪が成立します。

日本人が外国方式で婚姻した場合は、現地の国が発行する婚姻証明書を在外公館や本籍地の役場に提出して戸籍上の届け出をしなければなりません。

この届け出をしないまま別の人と婚姻した場合、婚姻届が受理されて法律婚が二重に成立することがあるのです。

 

なお、以上は刑法の話ですが、民法では、次のように規定されています。

 

【民法】

(同居、協力及び扶助の義務)

第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

 

(裁判上の離婚)

第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

 

(重婚の禁止)

第七百三十二条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

 

民法では、離婚の原因となったり、慰謝料請求の対象となるのです。